最近街を歩いていると、「外国人が多くなったな」と感じることはありませんか。
私は以前、アメリカに住んでいましたが、日本に帰国するたびに、この数年で外国人の数が増えたような気がするな、と感じています。
事実、日本政府観光局によると、日本を訪れる外国人の数は年々増えているのです。
今回は、そんな日本を訪れる外国人に対してのおもてなしについて考えてみましょう。
日本への外国人観光客の傾向
近年の増減傾向
2011年は東日本大震災の影響もあり、日本を訪れた外国人の数は一時的に減少しましたが、その後年々増加しています。日本政府観光局(JINTO)のデータによると、2015年には約2千万人、約2016年には約2千1百万人、2017年には約2千9百万人となっています。
季節ごとの変動を見ると、7月8月が1年を通して最も数が多く、逆に1月2月は少なくなります。
韓国、中国、台湾からの訪日数がトップ3となっており、次いで香港が続きます。
近隣のアジアからは気軽に来やすいのかもしれませんね。
ヨーロッパの中では、英国と次いでフランスがトップ2です。
アメリカからも、2017年には約140万人が来日しました。
面白いことに、オーストラリアやニュージーランドを含むオセアニアからの訪日は12月と1月にピークを迎えます。
これは、近年スキーやスノーボードを楽しみに日本にやってくる観光客が多いことが理由なようです。
人気の観光地
では、その外国人訪日客に人気なのはどのような場所なのでしょう。
トリップアドバイザーという旅行サイトが2017年に発表した、「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」によると、以下のような結果になっています。
1位 伏見稲荷大社(京都)
2位 アキバフクロウ(東京)
3位 広島平和記念資料館(広島)
4位 厳島神社(広島)
5位 東大寺(奈良)
6位 清水寺(京都)
7位 新宿御苑(東京)
8位 金閣寺(京都)
9位 箱根彫刻の森美術館(神奈川)
10位 高野山(和歌山)
皆さんは行ったことがありますか。
私は京都以外のエリアでは実は行ったことのない場所ばかりでした。
また、東京に馴染みはあっても、2位のアキバフクロウのことは全く知りませんでした。
おもてなしを考えるのであれば、事前に日本のあらゆる土地を訪れておき、有名な観光名所については把握しておくと良いかもしれませんね。
一方、上記の観光地の多くは都市部に位置していますが、地方エリアでも観光が活性化しているところもあります。
例えば、山梨県の富士河口湖町は、富士山と河口湖を同時に写真に収められるということから、近年多くの外国人観光客に人気があり、特に富士芝桜祭りのシーズンとなる4月5月にはピークを迎えます。
また、北海道の函館市は2015年以降天津・北京との定期便が就航し、函館山山頂展望台や金森赤レンガ倉庫へ景色を眺めに訪れる外国人が多いようです。
四国の徳島県三好市は、香港からの観光客が多く、大歩危峡などの渓谷が人気です。
体験型観光へ
近年の傾向として、日本だからこそできる体験を期待して、日本を訪れる外国人客が多いようです。
特に、この体験型というのは、現地人がすることを楽しむ体験、という意味合いが大きく、
日本人にとっては日常的と思えるようなことを体験しに訪れる人々や、逆に日本人が日本で観光をするように観光を楽しむという人々まで幅広くいます。
体験型観光の人気が高まっている背景には、2つの要因があるようです。
まず1つは、インターネットで現地の人が発信した情報により早く簡単にアクセスしやすくなったことから、旅行ガイドや旅行代理店などから情報を得なくても、自分から現地で体験したいモノやコトを選びやすくなっているということです。
実はこのような背景から、体験型観光自体は日本だけでなく、世界各地でも似たような傾向があります。
もともとは現地人に親しまれてきたコトがインターネット上で話題となり、「自分もやってみたい」という期待から現地を訪れる人が増えているのです。
二つめの要因は、日本の地方都市の観光関連組織がその土地だからこそ体験できるアクティビティを積極的に発信していたり、日本及び外国の旅行会社が体験型のツアーを宣伝していることがあります。外国人が現地での体験をインターネット上で共有することで、宣伝効果となり、将来的な集客となることが期待されています。
人気の日本体験
交通機関
観光という観点からは、一見注目を浴びることは少ないように感じますが、日本の交通機関は世界から様々な点で注目されています。
まず、電車やバスの時間の正確さが日本を訪れる外国人には驚かれることがあります。日本の都市部では、5分以内の間隔で電車が運行されていることもありますが、世界的にはこのように細かな間隔でしかも正確な時刻表通りに運行されることはほぼありません。
そのような理由から一度乗ってみたいという外国人が多くいるのです。
さらに、Shinkansen(=新幹線、英語ではbullet trainとも言います)という単語は世界的にも認知されつつあるほど、人気が高いです。
その人気の理由は、見た目のカッコよさという人もいれば、販売や清掃などの車内サービスを面白いと考える人もいるようです。
ちなみに、来日外国人の利用数が最も多いのは、東京・京都間です。
実は、JRが提供するJapan Rail Passのような、外国人向けの特別チケットというものも販売されています。
そのような情報を事前に把握しておくと、外国人をもてなす際には役立つでしょう。
コンビニ・自動販売機
コンビニや自動販売機自体は、日本固有のものではありませんが、扱う商品に日本の独自性を感じる人が多いようです。
コンビニだと、総菜やスイーツのクオリティの高さに驚いたり、また、漫画や洗剤、配送手配など幅広い商品を取り揃えていることに感動する声もあります。
確かに私自身も日本以外でコンビニを使いますが、日本のコンビニのレベルの高さは他の国のコンビニとは違うと断言できます。
アメリカに住んでいた時も、日本のコンビニが恋しくなることがありました。行く度に新商品が陳列され、実に様々なサービスが利用できるので、多くの外国人観光客には珍しいものに見えると思います。
自動販売機の商品は、他の国のものと変わらないものもありますが、一部の商品は他の国の自動販売機では手に入らなかったり、また設置数や設置場所が全く違う場合があります。例えば、コーンポタージュやおしるこなどは、温かい商品が提供可能な日本の自動販売機特有のものです。
海外の自動販売機は多くの場合、温度の違う商品を1台の自動販売機で売っていることはないようです。
また、駅構内や街中に自動販売機があるのも日本では一般的ですが、破壊される危険があるため一部の安全な場所にしか設置されないこともありますね。
温泉・銭湯
温泉や銭湯は、日本人も観光の目的にすることがありますが、大衆の前で裸になることがあまり一般的ではない文化圏から来た人たちにも最近は人気を集めています。
近年、大江戸物語や万葉の湯・万葉倶楽部のようなエンターテイメント性のある複合的温泉施設が日本全国に作られてきており、特に観光地に多く位置しているため、気軽に体験しやすいようです。
このような施設では、館内着として浴衣や作務衣を着ることができるというのも外国人にとっては貴重な体験となるようです。
ただ、温泉施設や銭湯をめぐっては、外国人の受け入れにいくつか課題も残されています。まず、入れ墨やタトゥーも持つ人に対しての入浴を許可するかしないかというものです。海外ではニュージーランドのマオリのように入れ墨が伝統文化となっている地域や、ファッションタトゥーとして日本よりも社会に受け入れられている地域もあります。
日本では、入れ墨やタトゥーがある場合は入浴を禁止している施設もあるので、案内をする場合は事前に規制を確認しておきましょう。
また、温泉や銭湯に馴染みのない場合はマナーを理解してもらうことも重要です。
マナーを知らず、タオルをお湯に漬けてしまったり、髪を束ねずに入浴したり、また、タオルを巻いたり水着を着用したり、といったトラブルは起きやすいようですが、他の利用者の迷惑になるということを伝える必要があるでしょう。
伝統に関する体験
日本の文化体験と聞くと、一番に思いつきやすいのは、書道や着付け、茶道など日本独自の文化を自分で行うことができるようなアクティビティかもしれませんね。
実は最近は、そのような稽古の道場や教室が外国人向けに短時間の体験コースを設置している場合も多くなってきています。
書道や着付け、茶道などは海外で本格的に習うことは難しいので、日本で習っている自分の姿を写真に収めてインターネット上で共有することで、興味をもってもらえるようです。
空手、柔道、弓道、剣道などといった日本発祥のスポーツで、海外で人気のものも多いため、日本の道場に体験に来るという人々もいるようです。ただ、万が一怪我をした場合の保険の対応が難しく、まだまだ気軽に参加できるというわけではないかもしれませんね。
祭り・伝統行事
青森ねぶた祭、京都の祇園祭、さっぽろ雪まつり、徳島の阿波おどりなど、日本各地の祭りには、日本人のみならず、外国人も多く押し寄せます。
祭りによっては、外国人が法被を着て実際に神輿を担いだり、浴衣を着て踊ったりということも気軽に受け入れられています。
祭りでは、屋台が多く出店するため日本独自のスナックやご当地グルメを楽しんだり、また、花火等のイベントが合わせて開催されることもあり、一度に様々な体験ができるのも魅力です。
おもてなしの際の注意
異文化の習慣に配慮
外国人をもてなす時には、日本とは異なる習慣に配慮することが大切です。宗教上の理由や個人的な考え方から食べられないものがあったり、一定の時刻にお祈りを行う習慣をもつ人もいます。そのような日本との文化の違いに配慮し、できる限り快適に日本に滞在してもらえるように工夫できると良いですね。
確かに、「郷に入らば郷に従え」というように、日本に来たからには一般的な日本の習慣に慣れてもらうこともある程度は必要かもしれませんが、宗教や個人の事情はその個人の性格や価値観と深く結びついているので、一時的に変えるということは容易ではありません。
日本の伝統的なルールを守ってもらいながらも、自己中心的な考え方を避け、緩和できる部分は柔軟に対応しておもてなししましょう。
地域の人気体験情報は事前把握
日本での滞在時間が限られているという外国人観光客は非常に多いです。滞在中の予定をびっしりと事前に決めてきている場合もありますが、天候や交通事情から予定が変わってしまい空き時間ができてしまう、ということもあり得ます。
頻繁に外国人をおもてなしする立場であれば、地域で気軽にできる人気体験を把握しておくと、そのような場合に役に立ちますね。さらに、自分も事前に体験しておくとより一層説明がしやすくなるでしょう。
SNS映えは世界共通に重要
日本人も旅行中にはSNS上に写真や記事を投稿することは良くありますね。
海外からやってきた人々も同様で、SNS上で日本での体験を共有している人はとても多いです。
特に、インスタグラムなど写真の投稿は文字の投稿に比べると、簡単にでき、受信側も状況を理解しやすいので、人気のSNSです。外国人を受け入れる側としては、SNSで情報を拡散して宣伝してもらえれば、その後新たな外国人客の訪問につながる可能性が高くなりますので、積極的に活用してもらうと良いでしょう。
SNSで印象的な投稿となるような観光地を案内する、名物を用意しておくなどの工夫をするといいかもしれません。
まとめ
以上に示してきたように、外国人に満足してもらえる体験を日本流で提供することが、満足度の高いおもてなしをするためのカギとなります。
今後、2020年の東京オリンピックに向けてさらなる外国人の来日も期待されているので、外国人に人気の体験を把握して日本での滞在を楽しんでもらいましょう。
もちろん、簡単な英語の挨拶や会話表現を使って交流できたら素晴らしいですね。