英語を学ぶ人が必ずつまずくのが、a や the といった冠詞の使い方ではないでしょうか?
冠詞は日本語にはない概念で、説明も難しいため、なかなか使いこなせないのが事実です。
ネイティブスピーカーのほとんどは感覚で冠詞を使いこなしており、
英語を大人になってから学んだ人にとってはこの感覚をつかむのが非常に困難です。
じゃあどうすればいいのか…?
率直に言うと、冠詞を完璧に使いこなすには「慣れ」しかありません。
英会話や英語での読書を繰り返す中で、ゆっくりと感覚をつかむことが重要。
しかし、もちろん、そのベースに冠詞の使い方に関する基本的な理解があるにこしたことはありません。
そこでこの記事では、みなさんが少しでも冠詞を使えるようになるように、
冠詞の基本的なルールをまとめました。
英語を母国語としない人が間違えやすい例文もまとめましたので、ぜひチェックを忘れずに。
皆さんの冠詞レベルが上がることを願っています!
目次
そもそも冠詞ってなんだ?
冠詞とは西ヨーロッパやアフリカの言語に多い概念で、名詞の前についてその名詞の特性を表す働きをする言語の要素です。
主な働きは、名詞の数を明らかにすること、
そして名詞が「一般的なもの」か、それとも「特定のもの」なのかを明らかにすることです。
つまり「犬」と言った時に、「犬というもの一般」の話をしているのか、それとも「近所のおばさんが飼っているあのチワワ」の話をしているのかを明確にしてくれます。
英語の冠詞の種類と意味
英語には2つの種類の冠詞があります。
① a/an
a(母音で始まる名詞の前ではan)は「不定冠詞」と呼ばれ、その名の通り「たくさんあるものの中から一つに特定できない」ものの話をする時に使われます。
これは名詞の数を「一つ」に特定しますが、それ以上の情報は含みません。
(例)
a dogというと、「複数の犬」ではなく「犬一匹」の話をしているのは分かりますが、シロなのかクロなのかそれとも近所のチョコなのか、どの犬の話をしているのかは分かりません。
② the
対してtheは「定冠詞」と呼ばれ、何の話をしているのかを特定してくれます。日本語に無理やり訳すなら「その(あの・この)〜」といったところでしょうか。多くの場合、会話や文の中で既にでてきたものを再び指す場合に使われます。
(例)
the dogと言えば、聞き手は「ああ、さっき話してた近所のおばさんが飼ってるチワワのことね」とわかります。
冠詞の機能~そもそもなんで冠詞って必要なの?~
ここでは冠詞の機能を紹介します。
英語は例外が多い言語で、その全てを網羅するとかなり煩雑になるので、以下では基本ルールのみを説明していきます。
① ものを特定する
これが冠詞の最も重要な役割です。
まずは、以下の例文を見てみましょう。
(例)My neighbor has a dog. I see the dog every morning on my way to work.
(私のお隣さんは、とてもかわいい犬を飼っている。私はその犬を、毎朝通勤途中に見かける)
一文目では a が使われています。
そのため「お隣さんが犬(という生き物)を飼っている」といった意味の文なので、犬一般の話をしていることが分かります。
しかし二文目ではthe dogと表現することで「前の文で述べた、お隣さんの飼っている犬」と、地球上の何億匹といった犬の中から、ある特定の一匹の話をしているんだということを明らかにできます。
もしI see a dog every morning on my way to work.と表現すると、毎朝犬を見かけるけど、毎日見かける犬は違っている(今日はシロ、昨日はクロ、明日はポチといったように)という意味になります。
なぜならaには特定する力がないからです。
② ものの数を明確にする
英語は日本語と違い、ものの数をはっきり決めたがる性質があります。
特に「一つなのか複数なのか」の違いは英語話者にとって超重要。
そのため、名詞に単数形と複数形が存在します。
複数形はsをつけることで作られます(dogs:何匹もの犬)。
一方で単数形は名詞の前に不定冠詞a/anをつけることで作られます(a dog一匹の犬)。
冠詞も複数形のsもついていない状態(dog)は名詞の基本形で、辞書で探す際の形ではありますが、数の決まっていない宙ぶらりんの状態であると理解すると分かりやすいでしょう。
基本的に、文章においてこの形で使われることはありません。
③ 慣用表現を作る
そしてもう一つの重要な役割は、慣用表現を作ること。
つまり、名詞や形容詞に冠詞をつけることで、今までになかった新たな用法を作ることが出来るのです。
(例)the poor (貧しい人)= poor people
Poorは「貧しい」を意味する形容詞で、名詞の前につけて使われます。
しかしtheの定冠詞をつけると、まるで名詞のように使えるのです。
定冠詞theの使い方
ここでは、定冠詞theの使い方を見ていきましょう。
① すでに会話/文の中で使われたものを指す
これがtheの最も基本的な用法。会話や文の中で、直前に触れられた事象について、戻って話をする時に使われます。
「その◯◯は〜」、「その◯◯について〜」などのように考えるとわかりやすいかと思います。
(例)I read a book yesterday. The book is about poetry.(私は昨日本を読みました。その本は詩についての本です)
会話の中で、初めて何かを持ち出すときには、そのものは特定されていないことが多く、不定冠詞(a/an)が用いられます。
しかし、2度目以降は定冠詞(the)になると覚えておくと分かりやすいでしょう。
② 相手がすでに知っている「ある特定の」ものを指す
これは①の用法に似ていますが、直前で触れられていなくても、相手が「どのものか」を特定できるときに使われます。
(例)I was reading the book yesterday. (昨日、あの本を読んだよ)
話者と聞き手は、以前に「とある一冊の本」について話をした過去があります。数日後、もう一度同じ相手と同じ本の話をする時、きっと相手はどの本の話をしているのか分かりますよね。ですのでtheで特定できるのです。
もし上記の例文を、過去にその本の話をしたことのない人に言うと、「え、何の話してるの?」と困惑させてしまいます。
(例)I live by the lake.(湖のそばに住んでいるよ)
この場合は、過去に湖の話をしたことがなくても「この世にたくさんある湖のうちどれを指しているのかおそらく分かってくれるだろう」と自信のある時に使う例文です。
例えば滋賀県に住んでいる人だったら、「この辺りで湖と言えば琵琶湖しかないよね」といった感じでしょうか。
③ 話者が名詞を特定できている場合
相手と以前に話したことがなくても、話者が初めからある特定のものについて話した時にもtheが使えます。
この用法は、二つの例を比べてみると良く分かります。
(例)I am going to the restaurant by the beach.(海辺のあのレストランに行きます)
I am going to a restaurant by the beach.(海辺にあるレストランに行きます)
一つ目の例文では、何というレストランに行くのかがすでに決まっています。しかし二つ目の例では「海辺にあればどのレストランでも良い。まだ決定していない」といったニュアンスがあります。
このニュアンスの違いによって、話者のこの言葉に続く相手の反応が変わってきます。
一文目に対しては、おそらく
(例)What’s the name of the place? (なんていうところ?)/Have you ever been there before? (前に行ったことある?)
いう返事が返ってくるでしょう。
一方で二文目に対しては
(例)You haven’t decided where yet? (まだどこにするかは決めてないの?)/I know this really great place. (良い場所知ってるよ)
となると予想できます。
Aとtheの違いだけで、会話の流れが完全に変わってくるのです。
④ Theを使った慣用表現
これらは、theをつけることが名詞や形容詞に新たな意味を持たせることが出来たり、theをつけることが定型化した場合です。
・the 形容詞
上でも少し紹介しましたが、the+形容詞で「その形容詞の特徴を持った人の集合」という意味になります。こう書くとややこしいので、例を見てみましょう。
(例)the rich(お金持ちの人)
richという特徴を持った人を集合的に表すことが出来ます。Rich peopleと意味は同じですが、より改まった表現です。
(例)The Japanese are known for their cleanliness. (日本人は清潔なことで知られている)
言語名にtheをつければ、その国の人々といった意味を作ることが出来ます。
・the 苗字の複数形
(例)The Smiths are very nice people. (スミス家の人々はとても良い人たちです)
The+苗字の複数形で「~家の人々」といった意味になります。
・the 楽器
これはもはやルールとして覚えておくべき定型表現。
中学校でも習いますね。「楽器を弾く」と表現する際には必ず楽器名の前にtheをつけます。
(例)I play the flute. (私はフルートを演奏します)
不定冠詞a/anの使い方
次に不定冠詞のaとanの使い方を見ていきましょう!
不定冠詞は定冠詞よりも比較的理解しやすいのではないかと思います。
① aとanの使い分け
「母音で始まる単語の前ではaがanになる」と習い、そのまま理解している人が多いのではないでしょうか。大抵の場合はこれでよいのですが、この理解だと以下の例に困惑してしまいます。
(例)an honor(名誉)
(例)a union(組合)
注目すべきは、名詞の最初の文字よりも、名詞を発音したときの最初の音です。なぜならanは発音を楽にするための不定冠詞だからです。
Honorは「アナー」と発音します。「ア・アナー」と発音するのが難しいため、aをanに変えて「アン・アナー(もしくはつなげてアナーナー)」と発音できるようにします。一方で母音uで始まるunionの発音は「ユニオン」。「ア・ユニオン」のままでも十分に発音できます。
つまり、aとanの使い分けは「名詞の最初の文字が母音(a, e, i, o, u)で、かつ発音がア・イ・ウ・エ・オの場合はan、それ以外はa」と覚えておくと便利です!
② 単数のものにはとりあえずa/anをつけよう
a/anの最も重要な役目は、名詞が単数であることを示すこと。a/anをつけなければ単数にならないと思っておいても良いくらいです(英語で、単数でありながら冠詞のつかない名詞はほんの一握りです)
(例)I have a pen. I have an apple, too.(私はペンを一本持っています。また、私はリンゴを1つ持っています)
ものが単数の場合、そしてtheをつけて特定しない場合は、基本的に必ずa/anをつけると思っておきましょう。
冠詞を使わない時
基本的に英語の単数形の名詞には、定冠詞もしくは不定冠詞のどちらかが必ず付きます。
しかし、単語の中には単数形でも冠詞をつけない表現がいくつかあります。
以下の二つは特に頻出なので覚えておきましょう。
① 固有名詞や代名詞には冠詞なし!
John(名前)のような固有名詞やhe(彼)のような代名詞は、すでにそれ自体に特定の様子を含んでいますので、冠詞がつくことはありません。つまり、the Johnとは言いません。
代名詞に関しては、「代名詞=冠詞に代わるもの」と覚えておくとミスが減ります。つまり「彼女のカバン」と表現する際は、a her bagではなく単にher bagとなります。
② 言語・スポーツ・学問名は無冠詞
言語、スポーツ、学問名には冠詞が付きません。これは、冠詞をつけると意味が変わってしまうからです。
例えば、
(例)I play basketball. (私はバスケットボールをしています)
上記のように、スポーツの意味でbasketballという言葉を使いたい場合は冠詞をつけません。a basketballというと「バスケットボールのボール」を指すことになってしまうからです。
(例)He is a professor of economics.(彼は経済学の教授です)
学問名にも冠詞はつきません。
日本人が間違えやすい冠詞の用法
最後に、日本人が間違えやすい冠詞の用法を例文で見ていきましょう。これをマスターできれば英語レベルがぐんと上がります。
① I hate cockroaches. とI hate a cockroach. とI hate the cockroach.の違いは?
非ネイティヴの冠詞の間違いで最も多いのがこれ!
何かを好き/嫌いであることを表現する際、定冠詞・不定冠詞・複数形のどれを使うのか…これを理解するために、3つの例文を見てみましょう。
(例)I hate cockroaches. (私はゴキブリが大嫌いです)
I hate a cockroach. (私は、ある一匹だけ大嫌いなゴキブリがいます)
I hate the cockroach. (私はあのゴキブリが大嫌いです)
違いが分かりますでしょうか?一般的に○○が好き/嫌い、と言う時は、複数形を使います。
そうしないと2つ目や3つ目の例文のように、意味が特定されてしまうからです。
② a/anとtheで意味が変わるもの
定冠詞を使うか不定冠詞を使うかで意味が変わってくる名詞はなかなかややこしいところ。
いくつか例を見てみましょう。
(例)the Moon (月)/a moon(衛星)
Moonのもともとの意味は「衛星」。これはたくさんあるので、複数形にもなりますし、ひとつだけを指す場合不定冠詞がつきます。
しかしその中でも特に人間にとって特別な意味を持つ「月」は一つしかないものなので、定冠詞が付きます。
つまり冠詞の違いだけを使って、こんな文を作ることもできちゃうのです。
(例)The Moon is a moon of the Earth.(月は地球の衛星です)
ただし、a full moon(満月)やa new moon(新月)のように、月の状態を表す場合は、いくつもある月の表情のうちに1つとして、theではなくaを付けます。
③ 複数形にtheをつけてもいいんだっけ?
単数を表すためのaやanとセットでtheの使い方を覚えると、このような疑問が生じてくるのではないでしょうか。
正解を言えば、
「はい、複数形にtheをつけることは可能です!」
そして意外とザラにあります笑。
Theは不定冠詞と違い名詞の数を規定する力は持ちません。つまりある集団を特定したい場合、複数形にtheをつけても全く問題はないのです。
(例)Teachers are not satisfied with their wages./The teachers are not satisfied with their wages. (教師は賃金に満足していない)
上記の二つの例文は日本語にすると同じ訳になってしまいますが、若干の意味の違いがあります。
この記事を読んだ皆さんならもうお分かりでしょう。一文目は「教師というものは一般的に賃金に満足していない」という一般論を語る文である一方、二つ目は「(このデモに参加した)教師たち」もしくは「(ニューヨーク州の)教師たち」というように、ある程度特定されます。
何に特定されるかは、文脈で明らかになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
混同しやすい冠詞について少しでも理解が深まったでしょうか?
冠詞の役目は「なんの話をしているのか」を明確にすることです。
日本語は一般的にかなりあいまいな言語で、話の対象を特定せず「文脈から読み取ってねー」と放り投げることが多いです。
しかし英語は、話の対象を詳細まで特定したがる傾向があります。
そのために必要なのが冠詞です。冠詞を使うことで、ものの数や、たくさんあるものの中から、どれについての話をしているのかを特定することが出来ます。
冠詞には慣用的な用法や、特別なルールも多く、完璧に使いこなせるようになるまでには時間がかかります。しかし、基本的な用法を理解しておけば、ほとんどのシチュエーションで正しく冠詞を使えるようになります。
迷った時はいつでもこの記事に戻ってきてください!